当コーナーは、実際に起きた事例をもとに、クレジットカードの利用による不幸な出来事をご紹介します。皆様もこんなことに巻き込まれないようlご注意ください。第1回目は、インターネットからの”あやしい話”を4話シリーズでお届けします。※架空の名称、名前を使用しております。

今回の登場人物 関東地方在住、田中一郎氏(仮名)45歳からの相談

1話.迷惑メールからの出会い

 〜迷惑メールの受信〜

折からの不景気で給料が減り、毎月の生活費にも頭を痛めておりました。こんな時にパソコンの調子も悪く、今までサクサク動いていたアプリも思うように動いてくれなくなってきました。ある日、仕事から帰り、日課のようになった迷惑メールの削除をしていたところ、あるメールを誤って開いてしまいました。そのメールには「無償で金銭をご支援いたします!!」という内容が書きこんであり、興味本位で覗いてみたところ、大王という人物からの支援メールでした。

〜大王との出会い〜

あなたは、現在辛く思っている事がございませんか?悩みをお聞きしそれが金銭的に解決できるものであるなら、支援金を受けることで、気持ちがずいぶん楽になりますよ。さあ、今すぐ私のメール宛にご返信ください。と、大王より誘いがあり、軽い気持ちでメールを返信してしまいました。返信メールには、私の現状や将来の不安、経済状況が悪化していることを伝えました。お金がないことの苦しみから逃れられればどんなにいいだろうか、という淡い期待がありましたが、まだ遊び半分の気持ちでした。

〜鑑定士からのメール〜

翌日、鑑定士と名乗る者より突然メールが届いておりました。必ずあなたは支援される。「大」、「王」を有する者から非常に強いオーラが出ている。吉数は「18」である。大王を信じなさい。必ずあなたによいことが起きます。

2話.度重なる支払い催促

〜それは1,000円から始まった【最初の支払い】〜

3日目、サイト運営業者からメールが届きました。簡単な手続きをしてもらえれば数分後に18億円をあなたの口座に振込みします。まずは、手数料として1,000円をお納めください!1,000円という少額のため何の疑いも無く、指定されたサイトにクレジットカードの番号を入力し、支払いを済ませました。

〜受取承諾名義人番号の取得【2回目の支払い】〜

4日目、サイトからメールが届きました。支援金を受取るためには、“受取承諾名義人番号”を取得しなくてはなりません。そのためには3,000円が必要です。大至急、“受取承諾名義人番号”を取得して、18億円をお受取りください。3,000円という金額と、必須番号の取得ということで不信に思わずクレジットカードで支払いの手続きをしました。

〜送信開始最終決定認可【3回目の支払い】〜

5日目にも、サイトからメールが届きました。送信開始の最終認可を得るために、10,000円をお支払いください!認可が下りるということで安心し、10,000円の支払い手続きを済ませ支援金受取を待つことにしました。

〜データオーバーエラー発生【4回目の支払い】〜

6日目、サイトから不信なメールが届きました。今までに複数のやりとりをしたため、データ蓄積によるエラーが発生しました。このままでは、今までの手続きが無駄になってしまいます。支援金を受取るには、支援データの復元が必要です。つきましては、20,000円をお支払いください!至急手続きして今すぐ支援金をお受取りください。20,000円支払いましたが、無償で支援金が受取れるはずなのに、と少々不安になってきました。

〜支援金所持権利最終移行手続き〜

数時間後、サイトからメールが届きました。手続きの確認ができました。これよりあなたの口座に支援金を反映させますが、先ほど「世界支援協会」から連絡があり、支援金の所有者がまだあなたに移転しておりません。支援金の持主権利を移行しなければ違法譲渡となり、互いに罰則を受けてしまいます。最後に“支援金所持権利最終移行手続き”をお願いいたします。費用は60,000円になります。このお手続きが完了すれば自動的に18億円があなたの口座に反映します。大至急手続きして今すぐ支援金をお受取りください。立て続けに費用の請求があり、大王に以下の質問をメールで送信しました。私はお金に余裕がありません。あとどれくらい支払わなければいけないのでしょうか?もし、大王が偽者であるのならば、警察へ通報します。

3話.疑心から確信へ

〜大王からのメール【5回目の支払い】〜

7日目、大王からメールが届きました。心配には及びません。“支援金所持権利最終移行手続き”完了後に18億円が入金されます。キャッシュカードの準備は整いましたか?入金に関する手数料などはこちらで負担し、さらに税金面なども私の方で対応いたします。あなたに対応していただくのは“支援金所持権利最終移行手続き”の60,000円のみとなります。さあ、銀行も営業開始しております。早急にお手続きを済ませ、支援金をお受取りください。私は60,000円を振込むべきか悩みました。しかし大王のメールを何度も読んでいるうちに催眠術にかかったような状態になりました。夢にまで見た支援金が手に入るんだと思う気持ちの方が強くなってきていました。もう、大王を疑う気持ちが全く無くなっていました。

〜入金開始の案内〜

8日目にも、サイトからメールが届きました。入金手続きに関するご連絡です。お時間もございませんので早急に終わらせてしまいましょう。さっそくですが、金融機関との”直結を行う手続き”をご案内します。お時間までに送信していただきますようにお願いいたします。再度申し上げますが、終了時刻までにお手続きいただけませんと手続きを受諾できませんのでご了承ください。 <直結送金完了のための必須事項>あなたと「国際金融協同組合」を直結するための事務手続きを「国際金融協同組合」に全て委託する必要がございます。手続きは簡単です。”事務手続委託申請(全ATM内入金処理委託申請手続き)”80,000円をご入金ください!

〜大王へ申し出〜

私は、大王に対して、これ以上支払いはできないと連絡したはずです。追加費用が発生するとはどういうことですか?

〜大王の回答〜

9日目、大王からメールが届きました。これは支援金を受取るための必要な手続きになります。必ず私の名にかけて本日中に支援金をあなたの口座にお振込みさせていただきます。至急ご対応ください。しばらく考え行動せず・・・

〜さらに大王からのメール〜

10日目、大王からメールが届きました。どうされましたか?“事務手続委託申請”がまだお済でありませんね?このままでは“支援失敗”となってしまいます。私がこれまでに完了させてきた方と同じように、18億円を受取っていただきたい。今すぐ手続きいただければ“私の名にかけて”必ず完了させます。大船に乗った気持ちで初回引落し額などをお決めください。

4話.安堵から落胆へ

〜考えた末に【6回目の支払い】〜

80,000円をクレジットカードで支払いしました。大王から、もうこれ以上支払いできないと言っていることに対する回答はありませんでしたが、これまでに支援失敗したことはないと言い切る大王の言葉を信じました。今、信じられるものは“私の名にかけて”と言っていただける大王しかいませんでした。

〜18億円の受け取りは・・・?〜

11日目、サイトからメールが届きました。事務手続委託申請の確認ができました。それでは、さっそく18億円を振込みさせていただきます。もう、完全反映のステージに来ております。ご安心ください。最後に、事務手続き完了の“承諾”をしていただくことになります。“一括承諾依頼申請手続き(18億円最終口座反映処理)”100,000円!

〜大王へ【7回目の支払い】〜

もう、私は何の疑いもなく、これで終わるんだという気持ちでいっぱいでした。大王、100,000円をクレジットカードで支払いいたしました。

〜手続き完了〜

12日目、サイトからメールが届きました。長い間お疲れ様でした。これまでの手続きをもちまして全ての処理が完了しました。あとは、終了申請をして18億円をお受取りください。“終了申請(18億円入金完了事務手続き一式)”130,000円! 常識のある皆さまには、途中で“あやしい”とどうして気付かないのかと思われたことでしょう。そういう私自身、我が事ながら一番不思議でありました。何の関わりもない男に無償で18億円も支援してくれる人がこの世にいるわけがない。お金に余裕がないことで目先の利益にとらわれ、非現実的な、文字通りバーチャルな世界に引きずり込まれた自分が情けなくなりました。同時にインターネットの本当の怖さを身をもって実感しました。これからはこの様なサイトに触れる事がない様、自分を戒め、安易に他人を信用したりしない事をこの場をお借りしてお約束いたします。〈終わり〉